はんだクラック(はんだ割れ)/コールドジョイントの見分け方と補修
はんだ不良は「動いたり温まったりすると直る」「一定時間で再発する」といった“断続的な故障”の原因になりやすく、現場では見落としやすいトラブルです。本記事では、はんだクラック(はんだ割れ)とコールドジョイント(いわゆる冷はんだ)の違い、見分け方、補修の基本手順、再発防止のポイントをまとめます。
はんだクラックとコールドジョイントは何が違う?
はんだクラック(はんだ割れ)
はんだ接合部に微細な亀裂が入り、導通が不安定になる状態です。熱サイクル(温度変化の繰り返し)や振動、基板のたわみ、重い部品の応力などで起きやすく、外観では分かりにくいことがあります。
コールドジョイント(冷はんだ)
十分な熱が入らない、または表面状態(酸化・汚れ)などが原因で、はんだが金属面に適切に濡れ広がらず、見た目が灰色っぽく多孔質・ザラついた状態になり、信頼性が下がる不良です。
関連して押さえたい不良(現場では混同しやすい)
- はんだ付け中の揺れ:冷却(凝固)中に部品とパッドが相対的に動くと、接合が不安定になります。
- 凝固後の応力:固まった後に力がかかると、亀裂が生じて“割れ”として現れることがあります。
- 過熱:はんだ面が粗い、つやがない、粉っぽい、孔が多いなどの見た目になる場合があります(過度な加熱やフラックス劣化が関係することがあります)。
起こりやすい原因
コールドジョイントの主因
- こて先温度・熱容量不足(部品リードやGNDベタの熱を奪われる)。
- 前処理不足(酸化膜・汚れ・古いフラックス残渣がある)。
- はんだ・フラックスの管理不良(保管劣化、汚染、合金・線材の不適合)。
- 加熱時間が短すぎて濡れが進まない(表面張力で玉状に残る)。
はんだクラックの主因
- 温度サイクルによる膨張差(部品・はんだ・基板の熱膨張係数差)。
- 振動・衝撃(輸送、稼働時の振動、落下)。
- 基板の反り・たわみ(コネクタの抜き差し、筐体固定の歪み)。
- 重い部品の固定不足(コイル、電解コンデンサ、トランスなど)。
- リワークの熱履歴が多い(繰り返し加熱でランド弱化・界面劣化のリスク)。
見分け方(症状・外観・測定)
症状から当たりを付ける
- 電源が入ったり入らなかったりする/軽く叩くと復帰する。
- 温まると直る/冷えると再発する(またはその逆)。
- 特定の姿勢・振動・ケーブルの角度で再現する。
- 負荷をかけた瞬間だけ落ちる(電源・コネクタ周りで多い)。
目視(ルーペ/実体顕微鏡)で見るポイント
コールドジョイントの典型サイン
-
表面が灰色っぽい、つやが少なめ、ザラザラしている。
-
フィレット(はんだのなだらかな盛り上がり)が形成されず、玉状に寄っている。
-
リードやパッドの“境目”がくっきりしていて、濡れ広がりが乏しい。
はんだクラックの典型サイン
- リード根元(ヒール)やスルーホール周りに細い線状の割れが見える。
- 円周状にリングが出る(スルーホールのフィレット周りが切れて見える)。
- 部品を軽く押す/揺らすと、はんだ面に微妙な動きが出る(やりすぎ注意)。
電気的な確認(テスター/オシロ/通電試験)
- 導通(抵抗値)の微妙な変化を見る:ケーブルを動かす、軽く基板をたわませる、温風/冷却で温度を変えるなど、再現条件を作って抵抗が跳ねる箇所を探します。
- 電源系は電圧降下・リップルも確認:負荷をかけた瞬間に落ちる場合、電源ラインのはんだ不良やクラックの可能性が上がります。
- 断続不良は“その時だけ”正常値になることがあるため、複数回・複数条件で確認します。
見えない場所の不良(必要に応じて)
- BGA/裏面電極部品など:外観では判断できないため、X線検査や専門業者での解析が必要になることがあります。
- 層間・スルーホール内部:表面は良く見えても内側で割れが進んでいるケースがあります。
補修の基本方針(まずは安全とダメージ回避)
- 通電状態で作業しない:感電・短絡・部品破損を防ぎます。
- ESD(静電気)対策:静電気に弱いICがある場合、リストストラップや導電マット等で保護します。
- 「足す前に整える」:汚れた面にそのままはんだを盛ると、濡れ不良が残りやすく再発の原因になります。
- 最短時間で必要十分な加熱:過熱はランド剥離や部品熱損傷のリスクを上げます。
コールドジョイントの補修手順(リフロー中心)
用意するもの
- 温調はんだごて(適切な熱容量のこて先)
- フラックス(用途に合うタイプ)
- はんだ線(既存が鉛フリーかSnPbかを把握して選定)
- 吸い取り線(はんだウィック)/吸い取り器
- 清掃用品(無水IPA等)・ブラシ
- 拡大観察(ルーペ/実体顕微鏡)
手順
手順1:清掃とフラックス塗布
接合部周辺の汚れや古い残渣が多い場合は、先に清掃します。その後、対象のはんだ部にフラックスを塗布して、濡れを促進します。
手順2:いったん溶かして“濡れ直し”する
こて先をパッドとリードに同時に当て、接合部が均一に溶ける状態を作ります。溶けたら、少量のはんだを追加して濡れ広がりを作り直します。
手順3:過剰はんだは除去して形状を整える
ブリッジや盛りすぎを防ぐため、必要に応じて吸い取り線で余分なはんだを除去し、フィレット形状が確認できる状態に整えます。
手順4:冷却中に動かさない
凝固中に部品が動くと不良が再発しやすくなるため、固まるまで触れずに保持します。
手順5:清掃・再観察・導通確認
残渣が多い場合は清掃し、拡大観察で濡れ・ブリッジ・クラック兆候を確認します。その後、導通や機能試験で再現条件を満たして再確認します。
はんだクラックの補修手順(再はんだ+応力対策)
亀裂だけなら「再はんだ」で直る場合
微小クラックでパッド/リード自体に損傷がない場合は、フラックス塗布→再溶融(リフロー)→少量のはんだ追加→形状整え→冷却保持、で改善することがあります。
再発しやすい箇所は「応力の原因」も同時に潰す
- コネクタ:筐体固定の歪み、抜き差し荷重が基板に乗っていないか確認し、必要なら補強や固定方法を見直します。
- 重い部品:接着/固定/バンドなどで振動・揺れを抑える設計(または補修)を検討します。
- ケーブル:引っ張り力が基板にかからないよう、クランプや結束でストレスリリーフを作ります。
パッド剥離・導体損傷がある場合
ランドが浮いている、パターンが切れているなど、基板側に損傷がある場合は、ジャンパ配線やパッド再生など専門的なリペア領域になります。無理に加熱を続けると損傷が拡大するため、修理手順書に基づく対応や専門業者への依頼を検討してください。
失敗しやすいポイントと対策
温度だけ上げて“時間を短縮”しようとする
温度を上げすぎると、部品の熱損傷やパッド剥離、基板の変色などのリスクが増えます。適切な熱容量のこて先選び、予熱、フラックス活用で「必要な場所に必要な熱」を入れる方が安全です。
汚れた面に盛るだけで終える
表面が酸化・汚染されていると濡れが改善せず、見た目は直っても再発しやすくなります。清掃→フラックス→濡れ直しの順で工程を作るのが基本です。
冷却中に動かしてしまう
凝固中の微小な揺れが不良の原因になることがあります。固定や保持の工夫を入れ、「固まるまで触らない」を徹底します。
どこまで自力で対応し、どこから専門業者に任せるべきか
- 自力で対応しやすい:スルーホールの単純な再はんだ、ディスクリート部品の軽微な濡れ不良、コネクタ端子の単点補修(損傷が軽い場合)
- 慎重判断:多層基板でのGNDベタ周り(熱が入りにくい)、細ピッチIC、電源大電流部、繰り返し不具合が出る箇所
- 業者推奨:BGA/エリアアレイ、基板損傷(パッド剥離・導体切断)、解析が必要な断続不良、重要設備・安全に関わる装置
再発防止チェックリスト
- 濡れ広がりが確保できているか(境目が立っていないか)
- フィレット形状が確認できるか(盛りすぎ・不足・ブリッジがないか)
- 冷却中に動かさない工程になっているか(治具・固定の工夫)
- 応力源(振動・ケーブル荷重・筐体歪み)を抑えられているか
- 再現条件(温度・振動・姿勢)で再テストしたか